2017年11月14日火曜日

APRU(環太平洋大学連合)のAPEC University Leaderes' Forum

 先週、ダナンではAPEC会合が開催された。これに関連して多くのミーティングが持たれ、我々夫婦も結構忙しかった。もちろん政治家ではないので、APECの本会合ではなく、APEC CEO Summitが中心的なものだったが、これからの世界を考えるのには十分過ぎる刺激があった。
 あまりに色々なことがあったので、とても書き切れないが、思いついたことから書いておこう。
 まずはAPRU(環太平洋大学連合)のAPEC University Leaderes' Forumから。
開会の挨拶をするトレメワン氏
この会合は主催者がAPRUであり、共催がベトナム国家大学ハノイ校とベトナム教育訓練省である。APRUには京都大学が昨年まで参加しており、トレメワン事務局長も旧知のなかなのでダナン開催のお手伝いをしたこともあり、APRUのSenior Advisorということで参加させて貰った。
 7日には関係者がダナンに揃われて事務局のメンバーを招いて、ベトナム国家大学の総長さんによる夕食会が開催された。APRU事務局長のクリスや香港科技大のトニー学長と一緒に招待され、気心の知れたかつての仲間と一緒に楽しく時を過ごすことができた。
 8日の午前中に開催されたワークショップのテーマは「第4次産業革命における教育」が主たるものだった。参加者は、ベトナム、米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、中国、台湾、韓国、などのトップ大学の学長・副学長、そして情報産業などの民間企業の代表だった。残念なことにAPRUメンバーの日本の5大学の学長・副学長の参加がなかったが、たまたまこの時期に日本で国立大学の学長会議が開催されていたこともあり、残念だったが、まあこれはしょうがないだろう。
写真 左から3番目が香港科技大のトニー学長、その右がMr. Huang
色々な議論があったが、主たる議論は、ビッグデータやAIなど、激しく変わっていく技術進歩のなかでどのような教育をしていくべきなのかということではなかったかと思う。AIは人間の職を奪って行くものだという議論があるが、参加者は皆、これに反対の意見であった。特に中国のIT企業、Malong Technologies社の創立者であるMr. Huang Dinglongの発言はとても印象に残るものだった。AIはルーティンワークを置き換えていくが、人間にはより重要な仕事がある。人工知能を何に使うかを決めることだ。デザイナーはコンピュータの専門家である必要はないが、デザイナーは人工知能に何を求めるかを言うことはできる。人工知能の利用にとって大事なのは何をさせるかだという。そしてルーティンワークから解放された人間はより深い仕事をできる。
 さまざまな知識がネットワークのなかに集積され、世界中のどこからもアプローチできる時代には、単に知識を学ぶのではなく、問題を設定し、それをどう解決するのかが重要になる。教育の力点は「知識」からより「問題解決」になっていく必要がある、ということが結論であったと思う。
 来年の6月には日本に帰って、また大学で教えることになるが、問題設定と問題解決というキーワードはこれからのカリキュラムを考える上で大事な視点であり、それをこの会合で改めて学ぶことができた。

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