2018年8月19日日曜日

ブオンマトット(3)

(3日目)
 朝起きるとまた雨である。7時に食事をすませて8時半になるとチン氏が迎えに来る。今日はベトナム人二人のペアーと一緒である。英語は話せないようだが、商売をしているのだろうか、奥さんにはしょっちゅう電話が架かってくる。何か旅の間だの3分の1ぐらいは電話していたようだ。
 さて今日はまずYork Don国立公園である。これはブオンマトンの西からカンボジア国境までの広大な国立公園である。野生動物が多く住み、かつては野生の象を捕まえて調教していたという。今も野生の象は生息しており、カンボジアの国境を行き来している。象はパスポートは不要だが、人間は要りますと冗談も出ている。
 公園に向かう道は昨日とだいぶ様相も違う。まず水田がない。あまり農業には向いていないとのことだ。窪地では水田があるが、少し高いところはトウモロコシやサトウキビなどが栽培されている。もう少し上がると見慣れない大きな木が植えられている。コーヒーではない。もっと大きい。チン氏はこれがカシューナッツだという。驚いた。今までカシューナッツはベトナム土産として人にも勧めてきたが、実は僕自身がカシューの木を見たことがなかった。道路の舗装はかなり悪く、所々は減速せねばならない。そして見渡す限りのカシューナッツの林である。
 ベトナムのカシューナッツの生産高は大きい。トップはインドであるが、おそらくベトナムは世界の3位ぐらいではないか。
 人家もほとんど無いような場所をかなりの時間走るとようやくヨクドン国立公園の入り口に着いた。ここはムノン族の村がある。ここを暫く歩く。昨日の村に比べるとやや貧しい感じがある。ただ物乞いのような雰囲気はまったくない。これがベトナムの嬉しいところだ。
 土産物屋は似たようなものを売っている。トイレなどの施設は非常によく整備されている。
 ここからまた車で10分ぐらいのところで橋を渡りヨクドン国立公園のなかに入る。車を止めて降りるともう象が2頭少し先の林のなかで草を食べている。黒い小型のイノシシのような豚も草を食べている。
 我々はこれまでもインドやタイで象に乗っているので、あらかじめ象に乗ることは興味がないと言っておいたので、チン氏は一緒に森の散策をしようと言ってくれる。
 森のなかは大きな木はあるが、とても明るい。チン氏によると住民が時々木を切っていくので、明るいのだという。これは里山である。
 日本の里山に似ているが、何と言っても木の葉の大きさが皆大きいのが違うところだ。木の下には黒い腐葉土も見える。これは冬の気温が低いためだろう。ダナンのような気温の高いところでは落ち葉の分解が早いので黒くなるまえに分解してしまう。ここでは黒い葉が残って腐葉土になるようだ。
 ところどころに大きな土の塊がある。直径が1メートルほど、高さも1メートル近い。これは蟻塚だろうと思って聞いたが、チン氏は違う生物の名前を言う。ただ理解できなかったので、残念ながらここには書けない。
 30分ほど歩いて道に迷うのではないかと心配したが、チン氏は大丈夫と歩いている。やがてそろそろ戻りましょうと戻る。道にはいろいろな花が咲いていることに気付く。途中、チン氏は道ばたの木の葉を取って手で揉み、「ベトナム戦争の時にベトナム兵はこれを怪我の出血止めに使った。」と説明してくれる。
 象のところまで戻ると、ちょうどベトナム人のご夫妻が象に乗って帰ってくるところだった。写真に収める。
 10人ほどの人が集まったところで象への餌やりが始まった。餌は青いバナナとサトウキビである。サトウキビは大好物のようであるが、堅いサトウキビをばりばりと食べていく。近づいて与えるのが怖いほどである。

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