2016年11月28日月曜日

ダナンの銀行の不思議


 
ダナンの銀行窓口に行くと大変に不思議なことがある。二人の顧客が一緒に一人の銀行の係員(テラー)の前に座る。しかも番号札などないので、これはと思う窓口に行ってエイヤと座るのである。
 隣の人が窓口の係りのひととする話もすべて聞こえてしまうし、書類も全部見えてしまう。クレジットカード、現金や身分証明書のやりとりも自分の座っている前で行われるので、ときどき自分のものがもう一人の人のと間違わないか、心配でしょうがない。だから家内も僕も銀行に行くときは、できるだけ大学の職員の人と行くことにしている。
 昨日はランさんに頼んで一緒に行って貰った。大学のそばのドンガ銀行に入ると、例によって多くの顧客が来ており、すべての窓口の二人席はすべて埋まっている。カウンターの反対側の待合いにも多くの人が座っている。僕一人であれば、どこに行ってよいのか、さっぱり分からない。ランさんはすたすたと歩いて、何の迷いもなく、二人が既に並んでいる窓口に行く。そして、一言二言話をすると、並んでいた二人の一人が取引が終わったのか、席を立った。僕に座れという。僕一人では、こうは行かない。
 ランさんに「どの銀行でもかならずテラー(銀行員)の前に二つの席があり、他の顧客と一緒に並ぶのは普通ですか?ベトコン銀行でも、そうだったけれども。」と聞くと、彼女は意外という顔をして、「そうですよ。ダナンの銀行では皆そうなっています。」と不思議そうな顔をする。確かにダナンのベトコン銀行に口座を開いたが、そこもそうだった。

僕:「もし日本でこれをやったら、日本人のお客さんは卒倒して気絶しますよ。日本の銀行では番号札をもらい、一人一人が別々にサービスを受けるのです。」
ランさん:「ベトナムではこれが当たり前なので、今まで考えたこともありませんでした。」
僕:「だって書類の中身も、自分の口座の残高も全部分かってしまうでしょう。それではまずいでしょう。」
ランさん:「確かにそうですね。これが当たり前だと思っていました。」
 
 つまり個人情報の保護という視点は銀行窓口にはないのだろう。もう一つ、若い頃に銀行でカウンター係をしたことのある僕から見ると、必ず事故は起こっているはずだ。おそらくお客のカードを違う人に渡したり、いろいろな事故が起こるだろう。リスク管理という観点からも感心しない。
 昨日、ハノイから来たベトナム人の友達に聞いたら、既に番号札と一人一人の対応は当たり前だと行ってくれたので、ホッとした。ダナンでもいずれは変わっていくだろうと思うが、面白い体験である。

2016年11月24日木曜日

開発経済学の授業が終わりました

 

開発経済学の今期の講義が終わりました。授業を一緒にやっていただいたハー先生と学生たちです。この講義の間の学生たちのプレゼンテーション能力の高さには驚きました。開発経済学の意味を考えさせられ、学生たちから多くのものを学びました。

ベトナムの実質為替相場(覚え書き)

 最近は物忘れが激しく、その時々で考えたことをメモしておかないと直ぐに忘れます。ということで今回は小さなメモです。

1)実質為替相場とは?
 実質為替相場とは英語で、Real Exchange Rateという。ある時点での通貨の実質購買力がどのように変化するかを示している。まずドルと円を例にとって説明する。ここではドルの実質為替相場を考える。現在の日本と米国でそれぞれの国における生活に必要な商品のバスケットを想定する。ある時点tで日本で生活に必要な商品バスケットの値段を2000円とし、同じように米国での生活に必要な商品バスケットの値段が20ドルとして、そのときの為替市場のドル円レートが1ドル=110円であればt時点の実質為替レートは1.1ということになる。
ドルの実質為替レート=名目為替レート×米国バスケット価格÷
日本バスケット価格=110x20/2000=1.1
 
 さて1年後に米国のみでインフレが進み、バスケットの値段が22ドルとなったのに対し、日本では2000円のままとしよう。また為替レートが110円で変わらないとする。すると実質為替レートは以下の式で算出する。
ドルの実質為替レート(Q)110x22/20001.21
 
 ドルの実質為替レートQは上がっている。これは海外におけるドルの購買力が相対的に上がったことを意味する。日本では20ドルを出せば米国の22ドルに相当するものが買える。米国の消費者にはよいことだが、米国の輸出業者には厳しい。逆に日本の輸出業者は米国企業に比して有利になる。
 ドルの実質為替レートの上昇は円の実質為替レートの低下を意味する。円の実質為替レートの低下は日本の輸出企業にとって有利な条件となる。

2)実質為替レート変動の要因
 日本と米国の実質為替レートに影響を与えるのは3つの経済指標である。①名目為替レート、②米国のインフレ率、③日本のインフレ率である。前節1)の最初の条件に戻って、名目為替レートが110円から5%上がって1ドルが115.5円になれば、他の条件が変わらなければ、ドルの実質為替レートは1.10から1.1155に上昇する。以下の計算である。
Q115.5*20/2000=1.155
ドルの実質為替レートが上昇すれば、米国の輸出業者には厳しい事態となる。これは上に述べたとおりだ。

3)日本の実質実効為替相場変化
 2通貨間の関係である実質為替レートを他の通貨にも広げて、たとえば日本の円の対外的な購買力を計ろうとするものが実質実効為替相場である。
 日本円の実質実効為替相場は1980年代のバブル時代に最高レベルに達しているが、その後は下落しており、アベノミクスでの円安進行で実質為替相場の低下が進んだ。しかし今年は円高になって実質為替相場の上昇を見ている。
 このような変化のなかで、日本の輸出企業の業績も円高の時は悪化し逆に円安時には改善するという動きを見ている。

4)ベトナムの実質為替相場
 それではベトナムの実質為替相場はどうなっているだろうか。ベトナムの実質実効為替相場についてはいくつかの論文がある。
 とりあえず簡略した形でドルとドンのインフレ率格差と為替相場から2通貨間の実質為替相場の動きを考えて見よう。その上でベトナムの経常収支を観察してみよう。図1の米国とベトナムの消費者物価上昇率格差(青線)を見ると2008年から2011年にベトナムのインフレ率が極端に上昇している。
米国とベトナムのCPI上昇率格差と米ドル・ベトナムドン為替レート
(世界銀行データベースから作成)
 
 ダナン経済大学のキエン博士はこの時期を分析している。同氏によればFDIの急激な流入により国内のインフレ率が急騰し、一方でドンの名目為替相場(赤線)はそれほど下落せず、したがってドンの実質為替相場の急激な上昇が起こった。ようやく2010年にはドンの名目為替相場は急激に下落して調整が進んだが、本来であれば急激に名目為替相場を下落させることで実質為替相場の上昇を緩和すべきだった。
 ドンの実質為替相場の上昇の結果、2010年までは貿易収支が悪化し、経常収支も悪化している。国際収支そのものは急激な直接投資の流入により黒字を保つことが出来たが、ベトナムの輸出産業の競争力を失わせた。キエン氏はこれを「オランダ病」に例えている。
 ちなみに2012年以降はベトナムのインフレ率の大幅な低下とドンの段階的な切り下げにより、実質為替相場の増価は抑えられて経常収支の改善につながったのだろう。
 キエン氏の論文はなかなか面白い以下のアドレスからとれる。


2016年11月18日金曜日

Lecture on Balancee of Payments 国際収支の講義

I gave a lecture in the class of Mr. Nguyễn Trung Kiên about the balance of payment. I enjoyed the discussion with the students of the class.
ダナン経済大学のグエン・チュン・キエン先生のクラスで国際収支についての講義をさせていただくチャンスがありました。学生との議論はとても楽しかったです。大学のホームページで紹介されました。
Website of Danang University of Economics

2016年11月13日日曜日

ヤマハのバイクフェアー

Yamaha is holding Bike Festival in the promenade of Han River. There are many bikes and shops. Children can also ride on mini-bikes here. It's Vietnam!


ヤマハがバイクのフェアーをハン川沿いのプロムナードでやっている。沢山のバイクが並んでいる。子供もミニバイクを運転できるさすがにベトナム!



2016年11月12日土曜日

ダナンが国際観光都市になるためには?

 先週の講義でダナンの交通と京都を比べる話をした。あまり講義の部屋がよくなく、午後になると太陽が差し込み、あまり見えないので、折角用意したスライドが十分に見えなかったが、まあしょうがない。
 そのなかでダナンの街の歩道で人が歩けないことを示して、国際観光都市であるためには歩いて街を歩けることが大事だということを一生懸命に話したが、どうも学生諸君にはピンとこないようだ。

1)ダナン市の将来像と交通システム
 ダナン市は将来の柱の産業として、環境に優しい知識集約産業と並んで、観光もその柱としている。この街に3ヶ月住んで、多くの問題があると感じている。最大の問題は交通システムである。
 ダナンの交通については、前回も書いたが、世銀とJICAがそれぞれにプロジェクトのための調査を行っており、問題点はよく把握されている。ただこれが実施できるかは分からない。 
世界銀行:Vietnam Urbanization Review - Technical Assistance Report 2011
JICA報告書:ダナン市都市交通改善プロジェクト報告書
 たとえばダナンの街には交通信号があるが、これは2008年から2012年にスペイン政府の支援で出来たようだ。それに交通関知システムがついているらしいが、これはバイクの感知ができず、あまり機能していないとJICAのレポートにはある。住んでいるとたとえば市内の主要な観光の中心となるTran Phu(チャンフー通り)の信号は動いていないときもある。動いている限りはダナンの人たちはほぼ信号を守っているが、動いていないときは道路横断は外国人には大いなるチャレンジとなる。

2)少ない外国人訪問者 
 小生は京都から来ているので、京都を訪れる外国人観光客数も調べていたが、この3年ほどで急増している。確かに京都の街を歩いていると外国人観光客が非常に増えていて、八坂神社や祇園などは夕方に行くと外国陣観光客しかいないのではないかと思うほどだ。
 ダナンの街は観光で人気が出てきたという割には街中で外国人を見ない。中国・韓国の観光客が多いせいもあろうが、それを勘案しても少ない。どこかに年間の外国人観光客は30万人と出ていたように思う。(この資料をもう一度探さねば!整理が悪い)京都での外国人観光客の宿泊数は年間のべ300万人である。この比較はほとんど意味がないが、街を歩いている実感はとにかく少ない。一つの理由は海岸沿いのホテルに滞在し、ダナンの街にはほとんど出ない。観光は直接、隣接のフエとホイアンに流れているのだろうということは容易に想像できる。そのためにダナンの都心では外国人客の姿をあまり見ないというのが小生の印象である。

3)歩く街を作る
 ダナンはもっと歩きやすい街を目指し、外国人がベトナムの都市を満喫できる雰囲気を作るべきだろう。ダナンでは人々はバイクが自分の手足と一緒になっているので、長い距離を歩くということがないのではないかと思うが、外国人観光客は歩くのが大好きで、現に真夏の京都でも京都駅から三十三間堂まで歩いている。気温が38度近くても歩いて回ってくれる訳だが、ダナンの若い人にもそれが分かってもらいたいと思う。
 歩道が商品やバイクで埋まってしまい、安全に歩けないのも問題だ。小生は一度バイクや椅子を避けようとして転んでしまい、危うく腕を折るところだった。
歩道は商品とバイクで歩けない

4)こと消費への誘導
 ダナンには海岸以外にそれほどの観光資源がないように見える。近隣のホイアンやフエを含めても、おそらく車で回れば4日もあれば終わってしまう。ダナンに1日、ホイアンに1日、フエに2日もあれば終わってしまいそうだ。
 ただそれは表面的な観光地巡りであればの話だ。今の世界はより「コト消費」が注目されている。ダナンにはこれが出来るのではないだろうか。たとえばダナンには漁業がある。大理石の細工もある。農業体験も可能かもしれない。ベトナム料理やアオザイもそうであろう。
 ダナンがベトナム中部観光の一大拠点として将来もあるとよいのだが。

2016年11月7日月曜日

ダナンの交通システム

 この前の記事で書いた世銀のレポートでは、ダナンの交通システムについての記述もある。
Vietnam Urbanization Review - Technical Assistance Report 2011

 ダナンの交通事情は今のところ、それほど悪くはないが、いずれ限界が来ることは目に見えている。ダナンの現在の人口は約100万人であるが、2030年には250万人になると予想している。車の増加は道路の能力を超えることになるだろう。将来の車やバイクの増加に伴い、移動のための所要時間も加速度的に増加していくことが数字で示されている。
 バスや電車の公共交通機関が必要である。日本では明治維新以来、私鉄や国鉄が路線を建設した。そのころには一般の市民が使える輸送手段が限られていたので、市民は私鉄や国鉄を使い、電車網が形成されていった。そして都市はそれに合わせた発展を遂げた訳だが、バイク先行で発展が進んできたダナンではそのような発展は容易でない。バイクが普及するなかで、個人が移動の自由を享受しており、そのコストが低減ということである。ダナンはメガシティではない、そのためにバスに乗る方が時間もかかる。バスへの乗り換えが進まないだろうとしている。
歩道を埋めるバイクの駐車
 世銀のレポートは結論として、ダナンの将来の交通システムはバイクの存在と共存するシステムでなければならないとしている。その点は確かであるが、しかし世銀のレポートには疑問がないわけではない。ここで述べられているコストには、バイクによる事故、多すぎるバイクが生んでいる隠れたコストのことは一切述べていない。その点が非常に気掛かりである。

2016年11月6日日曜日

ベトナムの電気・水道料金

(ベトナムの電気・水道料金)
 今日は世銀のレポートを見ていた。これはベトナムの都市化をテーマにしている。
Vietnam Urbanization Review - Technical Assistance Report 2011

 その中で様々な面白い情報があるが、都市化に必要な電気の話しも面白い。今日はこのなかでも電気代のことを書いてみよう。電気代が安いなと思ったことがある。毎月の電気代の請求書である。我が家は150平米もある。熱帯の暑さの中だし、クーラーは一日中、夜もかけている。それで9月月間の使用料は4,143,515ドン(約18千円)である。1,849KWであった。KW当たりの料金は,2,235ドン(ほぼ10円)である。日本の料金は24円(価格ドットコムによる)のでほぼ4分の1だ。もし日本で同じだけ使っていたら、おそらく7万円になっていただろう。
 水代に至っては、月間で9万ドン(400円)である。これはアパート全体の使用料を戸数分で割っているようなので、単価は分からないが、ほとんどタダに見える。世銀の資料では、立方メートル当たり単価はベトナムでも都市によって違うが、約20セントぐらいのようだ。それにすると我が家は20立方メートル使ったことになる。日本であれば4000円になり(ienokoto.topによる単価)、当地の10倍ということか。
 ただ誤解して欲しくないのは、私は安ければ良いと考えているわけではない。むしろ安いことは心配である。ベトナムでは電気や水道の普及率が急速に上昇しており、これはとてもよいことである。しかし電気は月に一度ぐらいは停電がある。実際に十分なコストをカバーしているのか、特に水道などを見ていると不安がある。
 ダナンの水道については取水を南部に隣接しているカンナム省のソンカイ川からほとんどの水を取水しているが、最近、ソンカイ川の沿岸に製鉄所を移転するという計画をカンナム省がたてており、その実現を巡って論争が起きているようだ。私がいる間には出来ないだろうが、心配である。
 世銀のレポートでは、都市基盤の一つとしてダナンの都市交通の問題が取り上げられている。これは大変に面白い。内容はいずれ紹介していきたい。

2016年11月4日金曜日

日本がヤバイではなく、世界がオモシロイから僕らは動く

太田英貴著「日本がヤバイではなく、世界がオモシロイから僕らは動く」を読んだが、なかなか面白い本だ。著者は30前後の人ではないかと思うが、そのなかで書いていることはとても共感できるものがある。
著者は起業の後、世界を知らねばということで、英語をフィリピンで学び、それから2年間をかけて世界を回る。帰国したあとも、その経験が役に立ち、さまざまな仕事が回ってくる。
本の題名が正に著者のメッセージである。
実はこの人のもう一冊の本「僕らはまだ、世界を1ミリも知らない」を読んでいるのだが、これもなかなかの傑作だ。
このところ非常に忙しいので、何を面白いと感じたのか、まとめるヒマがない。もう少しヒマになったところでまとめたい。



First time to a barber shop 初めての床屋

I went to a barber shop for the first time in Vietnam. The barber shop I visited is a fine shop, but they couldn't speak English. I asked for shaving, but they didn't. Next time should I try one more time to ask for shaving in Vietnamese? Anyway I was satisfied with their cutting.
ベトナムで初めて床屋に行った。綺麗な床屋だが、英語は通じなかった。ひげ剃りも頼んだ積もりだが、なしで終わってしまった。次回はベトナム語で頼んでみるか。まあ髪の切り方には満足したが。

Cafe close to the Danang University of Economics ダナン経済大学そばの喫茶店

概観です
I found a cafe which is very modern and comfortable nearby the Danang University of Economics. The name is "I am Star." It is just two minute walk from the University. I felt at home here, because the cafe is just like same cafes in Kyoto.
ダナン経済大学でモダンな喫茶店を発見。大学からわずか2分ほど。喫茶店の名前は「I am Star」。京都の喫茶店にいるようでホッとします。
ホットコーヒーを頼むと右のような濃いコーヒーでベトナムらしい

店内にはなぜかお地蔵さん

2016年11月3日木曜日

VNNの記事から

だいぶ毎日の生活にも余裕が出てきて、ベトナムのことを考える時間も少しずつ増えている。毎日配達されるVNN(Viet Nam News)から面白いと思う記事を少しずつメモしておこう。

*ベトナムの退職年齢
 10月31日のVNNには、ベトナムの退職年齢の引き上げの話がでている。現在は男が60歳、女が55歳である。平均寿命は73歳で、このままでは年金支給が難しくなる。このためそれぞれ、62歳、58歳に引き上げる必要があるという。また実際にこの年齢で退職している人は40.5%いる。
 一方で若い人の失業問題もある。現在、ベトナム全土で191,000人の学部卒の若い人が失業している。これは第14回の議会への政府報告のなかでかかれている。


*10月までの直接投資
同じく、1031日のVNNには、201610月までのベトナムの新規直接投資(registered)の結果が新聞にでている。65カ国からの投資があり、国別では韓国(5.6十億ドル)日本(1.92)シンガポール(1.73)の順になっている。54の都市に対しての投資であり、ハイホンがもっとも多くの投資を受けており、総額は2,73billion)で、43の新規プロジェクトおよび34の既存プロジェクトに対するものである。