2017年12月13日水曜日

「東南アジアの自然」を読む

 弘文堂から出版された東南アジア学のなかの「東南アジアの自然」を読む。高谷浩一先生が編集されている素晴らしい本だ。ダナンに1年間住んで熱帯モンスーンという気候が温帯モンスーンとはかなり異なるものだと感じていた。しかしどう違うのかはなかなか説明できなかったが、この本では東南アジアの地学、気象、農業などが壮大な地球的な規模のなかで描かれており、地球規模のイメージをもって、はじめて今住んでいるダナンの気候を理解できたように思う。

 第一章「大陸と多島海」では東南アジアの陸と海の形成が描かれる。ダナンは古期産地というユーラシア大陸の古い土地のようで地震が少ない理由があるのだろう。ヒマラヤ山脈の組成やオーストラリアの北進など、複雑な東南アジアの陸地の骨組みが分かる。

 第二章「熱帯とモンスーン」では、東南アジアの気象について書かれている。東南アジアの世界の気象のなかに占めるユニークな位置を初めて理解できた。特に多くの図表はアマチュアである私にはとても興味深いものだ。たとえば53ページにある図1「大気の非断熱加熱率の分布(1、7月)」には驚かされた。この図によると東南アジアから赤道西太平洋は地球規模での大きな熱源となっている。これが世界にも希なモンスーン気候をアジアに生み出している。(53ページ)

 さらに55ページには、太平洋とヒマラヤの間の巨大な大気の流れが夏と冬でなぜ逆転するのか。そしてヒマラヤからの乾燥した空気が西アジアの乾燥地域を作り出していることなど、今まで考えたこともなかった大きな世界が描かれている。

 この本を読みながら改めて自分の住むダナンとはどのような場所かを考える。ダナンはユニークな気象条件を持っているように思う。この街の雨期は11月から1月ぐらいである。東南アジアの大陸部では夏の降雨が多いが、ダナンは島嶼部のように冬の降雨が多い。

 気候の変化にも異なるリズムがある。年間を通じる大きな変化、各季節における定期的な変化、そして日中の変化である。この日中の変化もダナンにいるとかなり特殊である。この本では、東南アジアの多くの場所では日中の午後に気温が上がりスコールが降るとされている。ところがダナンの雨期には日中よりも夜に雨が多い。夜中、雨の音がしていても朝には止んでいる。これは住んでいる人間には有り難い。

 ダナンの雨期が冬であることは既に書いたとおりであるが、ダナンにいると夏期の乾燥はかなりのもので夏に葉が枯れるのではないかと思うほどに雨が降らない。ところが東南アジアの大陸部の多くの場所では夏に雨が降り、冬は乾期である。同じ東南アジアでも大きな差がある。

 ところで、この本は先週、京都に帰ったときにアマゾンで古本として購入したものだ。発行は平成2年、既に27年前の本である。編者の高谷先生はもう亡くなられている。「多雨林の世界」の章を書かれた山田勇先生、そして最終章「プランテーション農業と農民農業」を書かれている田中耕司先生には京都大学の国際交流センターで勤務したときにタイへの学生派遣で大変にお世話になった。山田勇先生は学部学生を家まで呼ばれて気さくに話をされ、最終講義では世界中の森の話をされていた。また田中先生は東南アジア研究所の所長も勤められ、今はミャンマーに行かれいる。この本の執筆者紹介では平成2年にはお二人とも助教授でおられたとのこと。こういう碩学の方々に囲まれた京都大学時代は本当に楽しかった。京都大学で働かなければベトナムに来ようと思うことももなかったろう。

 お二人の章もこれから読み進めていく。楽しみである。

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