2016年9月3日土曜日

ラテンアメリカ諸国の所得格差の縮小

今朝は来週の木曜日の授業の準備のために、ラテンアメリカ諸国の不平等について二つの論文を読んでいます。こういう時に有り難いのは、京都大学のVNP接続を通じて、世界の論文が読めることです。感謝!

1) Miguel Szekely and Pamela Mendoza, "Declining inequality in Latin America: structural shift or temporary phenomenon?", 2015, Oxford Development Studies, DOI: 10.1080/13600818.216.1140134

2)Giovanni Andrea Cornia, "Income Ineqaulity in Latin America - Recent decline and prospects for its further reduction", February 2015, WIDER Working Paper 2015/020, United Nations University World Institute for Development Economics, Research

2000年代のラテンアメリカでは貧困の格差の縮小が見られたことはそれなりに認識していたが、この二つの論文を読んで、格差縮小の有様やその原因について大いに考えさせられる。

1)は縮小の状況をさまざまな数値から分析し、縮小の要因を長期的な要因と短期的な要因に分析し、今後も縮小が続くのかを検討する。

2)は縮小の要因について、より詳細な分析をするが、特に1980年代・1990年代にラテンアメリカ諸国で採用されたワシントンコンセンサスに基づく経済政策、そして2000年代の左派経済政策への転換も格差縮小の要因として重視している。

この二つの論文を読むと、開発経済のなかで格差の代表選手とみられていた中南米諸国で起こった変化が単に一時的な物ではないことがよく分かる。教育の普及や累進課税など、多くの政策と併せて、所得水準の向上も格差是正にポジティブに働いている。

クズネッツ仮説は所得水準の向上とともに、所得格差が縮小する可能性を示しているが、中南米の例はこれを裏打ちする物だろうか?

アジアの所得の向上と格差の拡大を考える上でも興味深い。

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