2017年10月15日日曜日

ベトナムでのBBC放送

 ベトナムの一般のインターネット網では英国のBBCを聞くことができない。日本では、英語で講義をしていたこともあり、できるだけBBCのWorld Serviceで英語のニュースを定期的に聞くことにしていた。ベトナムに来て、このニュースが聞けないことが分かった。以前にもそういうことはあったので、改めて驚きはしないが、がっかりした。
 BBCのWorld ServiceのPodcastニュースはBBCのその日のニュースから30分ほどに取りまとめて放送しているもので、世界のいろいろな出来事がバランスよく盛り込まれており、途上国の事情などもよく分かる。これがポッドキャストで配信されている。ところがベトナムでこれを聞こうとすると受信が出来ませんとメッセージが出る。
 ウェブページを見ることはできるのだが、音声はダウンロードできない。おかしな話しである。ウィキペディアなどで調べると、ベトナム政府がBBCに不快感を持っており、音声放送を遮断しているらしい。
 抜け道はある。VNP接続という方法で、あたかもベトナム外にいるようにして受信をできる。ただ一手間増えるのが面倒ではある。
 中華人民共和国ではもっと徹底しており、BBCだけでなく多くのウェブページそのものが遮断されており、ウェブ検索も多くがまったく機能しない。最近はVNPも禁止しているようだ。
 実は昔、北京の清華大学を訪問したときに驚いたことがある。清華大学のキャンパスのなかにインターネットコントロールセンターがあり、中国の東半分をコントロールしていると自慢げに話をしてくれた。中国の大学の科学研究は国策そのものなので、ここで国外との情報遮断の方法も研究していたのだろうと思う。残念ながら中国の大学には「学問の自由」はない。
 最近の中国を見ているとこんなことで将来の成長があるのだろうかと思うことがある。インターネットの情報はすべて国家がコントロールする。そのコストはいかほどになるのだろうか。最近の日経やWSJの記事によれば中国の大手IT企業に無理矢理、国の出資を受け入れさせ、国家が(すなわち共産党が)経営陣に参画することにより、情報を一層コントロールしようとしているという。
 3年ほど前にワシントンDCで講演会をしたときに中国人の学生から中国の将来をどう思うかと聞かれたことがある。私は「インターネットの情報管理などしていれば、将来若い人の創造性を奪うことになる。中国の成長を自ずと制限することになる。中国は『中所得国の罠』から抜け出せない」と答えたことがある。
 ベトナムには中国と同じ道を歩んで欲しくないと願っている。ベトナムは幸い政治的にも中国ほど強くはない。ぜひBBCの放送も自由に聞けるようにしてむしろもっとオープンにしていくことがこの国の将来の成長を約束することになるだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿