2017年8月22日火曜日

ダナンの上水道(2)

 ダナンの上水道の現状については、ダナンの上水道(1)に書きましたが、今日はその続きです。
 JICAが2015年にダナンに新しいホアリエン浄水場を建設する可能性について検討を行っており、その報告書がウェブに掲載されています。それを読むとダナンの上水道の問題点がよく分かります。

ベトナム社会主義共和国ダナン市ホアリエン上水道整備事業準備調査( PPP インフラ事業)ファイナルレポート 平成 28 年 3 月 ( 2016 年)独立行政法人国際協力機構( JICA)
 この調査に先立って、2010年にADBが行ったDa Nang Water Supply Projectで、ADBはダナン市の配水管網整備を支援し、一方、ホアリエン浄水場と市内までの導水管はPPPベースでの実施が適当と判断し、JICAがこの部分の実施可能性を調査したもののようです。

 上の図はJICAの報告書のなかにある現在の浄水場と計画中のホアリエン浄水場の場所が書かれています。図のなかのピンクや赤のHai Chau あるいはThanh Kheという地区がダナンの中心的な都心です。
 現在の浄水はダナンの南西から流れ込むCau Do側沿いにあります。このCau Do川での取水には大きく3つの問題があるようです。
1)乾期に河口から塩水が流れ込み、取水が難しくなる。上流のAn Trach堰(農業用の堰)から取水して送水をせざるを得ない。
2)Cau Do川の水は土の濁りが多く、浄水コストが高くなる。
3)Cau Do川の上流はカンナム省にあり、カンナム省の都合で取水が制限される可能性がある。
 これに比べるとダナンの北を流れるCu De川は濁りが少なく、またダナン市のみを流れることから他市との調整も不要ということです。
 JICAの調査は極めて詳細です。あまり細かくは書けませんが、取水の方法、浄水場の技術レベルの検討、周辺環境や市民への生活に対する影響などについて検討が行われています。財政面では、ダナン市の財政事情を検討し、PPP(Public Private Partnership)による運営を提案しています。その際のリスクをどうシェアーするかなどの問題も指摘されています。
 報告書なかで印象に残ったことの一つが過去の洪水の調査です。浄水場が洪水で冠水すると機械の再使用も難しくなります。このため過去の洪水を調査し、安全な高さを調べるわけです。このためにCu De川の流域に立つ、過去の洪水石碑を調査されています。候補地近辺の推移は4メートル近く上がることもあるようで、なるほどこういう点もあるのかと納得すると同時に、ダナンの洪水は怖いなとも思いました。以下、報告書の一部を引用しておきます。
ダナン市を含む中部ベトナム地域は、雨季の降水量が多く、度々深刻な洪水被害に遭っている。特に 1964 年、1999 年、 2007 年、2009 年の洪水は大規模なものでり、その中でも特に 1999 年の洪水による被害が最も甚大であり、下記のような深刻な事態を招いた。
<1999 年の洪水>
▲11 月 1 日~6 日の間に降った 900 ㎜に達するほどの豪雨であり、100 年間のな
かでも最大の降雨を記録した
▲ 市の設定する警戒水位レベルをはるかに超え、市全体で 2~4mに及ぶ浸水を引き起こした
▲ その結果、多くの死者・行方不明者が発生し、また道路などのインフラ施設や農地も甚大な被害を受けた
 
 この報告書を読むと2015年の段階で、すでに新規浄水場がないとダナンの上水供給は難しくなっていた印象があります。ダナンの人口は今後、急速に伸びるものと思われますが、水道は当然のことながら基本的なインフラですから、不安が残ります。
 今年の2月にこの問題で当地の新聞にダナン市が海外からの支援なくでもホアリエン浄水場の建設に自己資金で実施という記事がありました。これについてはまた別途書きましょう。




0 件のコメント:

コメントを投稿